山々が広がる緑豊かな里の、県内最大のジビエ処理施設
「京阪神の奥座敷」として人気の湯郷温泉があり、県の三大河川・吉井川の支流、吉野川が流れる岡山県美作市。人口約2万7千人の小さなまちは、丘陵と緑と清流に恵まれた風光明媚なエリアでさまざまな野生鳥獣と共存しています。なかでもシカが多く生息しており、その数は約3万頭で「人よりもシカが多いまち」と言われています。
シカをはじめとした野生鳥獣が多く生息する背景には、潤沢な食物環境があります。美作市は全国有数の黒大豆の産地で、『作州黒』と名づけられた大粒の黒大豆は最高級品として扱われています。まちを囲む低山には木々の新芽、ドングリ、栗などが自生し、シカ・イノシシは多彩な食物を取り込んで成長。ゆるやかな山々を移動するため筋肉がつき過ぎず、やわらかな肉質になります。
『地美恵の郷みまさか』は、増え続けるシカ・イノシシをジビエとして利活用することを目的に開設しました。温かみのある施設名は市民から公募したもの。地域の期待を受けて、この日もジビエの処理加工に勤しんでいます。濱田さんは「当施設は県内最大の規模を誇り、猟師としても活動するスタッフ6人による体制で運営しています。たくさんのシカ・イノシシを円滑に、おいしいジビエへと処理加工するためのこだわりを紹介します」と話し、施設を案内します。
「昔ながらのジビエのおいしさ」を生む、スピーディーな解体と一晩熟成
『地美恵の郷みまさか』が手がけるジビエの味わいについて、濱田さんは「一言で言うと『昔ながらのおいしさ』。『獲れたて・捌きたてのジビエ』のようなフレッシュ感があり、ほどよく嚙みごたえのある肉質が特徴です」と説明します。そのジビエづくりの生命線はスピード。猟師が迅速に搬入した個体を、解体師が無駄のない動きで解体していきます。「解体部門、精肉部門それぞれに技を極めたエキスパートを配置しています。彼らを筆頭に素早く、適切に処理加工できる人材が揃っているので、シカとイノシシが同時に搬入されてもスムーズに対応できるんです」(濱田さん)
スピーディーに解体処理された枝肉は冷蔵庫で一晩保管します。「熟成というよりも、適度に水分を飛ばすイメージで、フレッシュ感のあるジビエに仕立てています」という濱田さんの言葉どおり、枝肉はみずみずしいツヤをまとっています。さらに、精肉加工にも「昔ながらのジビエのおいしさ」につながるこだわりが。「『ありのままに近いジビエを、どのように下処理してひと皿に仕上げるか』これこそジビエ調理の醍醐味。料理人の皆さんに敬意を払っているからこそ、あえて手を加え過ぎず、脂身やスジを残したブロック肉で届けています」と濱田さんは熱弁します。
ジビエを通して料理人の創作・発想を後押しする濱田さんは、かつてレストランで肉料理を担当した元料理人。肉、そしてジビエへの思い入れは強く、ジビエ料理コンテストで自作メニュー「イノシシスペアリブのコーラ煮」が入賞するなど、高い調理技術とジビエの知見をもっています。「飲食店運営や調理現場を知るからこそできる提案があります。ジビエ料理にチャレンジされたい方はぜひ気軽に相談してください」
捕獲から処理加工の衛生管理を徹底して、「昔ながらのジビエ」を現代に
「昔ながらのジビエのおいしさ」を、時を越えていまの飲食店・消費者に親しんでもらうため、『地美恵の郷みまさか』はおいしさと安心を両立するジビエづくりを実現しました。国の国産ジビエ認証と岡山県の野生鳥獣食肉衛生管理ガイドラインにもとづき衛生管理を徹底した施設で、シカとイノシシを安全・安心のジビエに処理加工しています。
おいしく安全なジビエづくりは、適切な捕獲・搬入を実行する猟師が支えています。美作市では独自の衛生管理ガイドラインを発行し、猟師歴50年近いベテランから新人まで幅広い猟師陣に対して、おいしく安全なジビエにつながる捕獲知識を広めています。「猟師一人ひとりが正しい狩猟知識を取り入れてくれるおかげで、おいしく安全なジビエを安定的につくることができています」(濱田さん)
徹底した衛生管理のもとでつくり上げるジビエは、首都圏や近畿圏を中心とする多くの飲食店から信頼を得ています。最後に濱田さんは「私たちのジビエに旬はありません。季節に左右されない“芯のあるおいしさ”は通年メニューに向いているので、一度お使いいただけたらうれしいです」と呼びかけます。山の命であるジビエと飲食店をつなぐ“架け橋”として、『地美恵の郷みまさか』はこれからもジビエと真摯に向き合い続けます。
